GLP-1受容体作動薬 他のどこにもない集大成の知識と親切なアドバイス 画期的な肥満症治療薬はもとは糖尿病治療薬 美容外科での使用はNGが多い 効能・効果 副作用 注射か内服か 上手な使い方 

はじめに 

GLP-1受容体作動薬と呼ばれる肥満症治療薬が注目されています。既にご自分で使用している、あるいは友人・知人が使用しているという方もいるかもしれません。これらの薬はもともと糖尿病治療薬として開発されましたが、高い体重減少効果が認められたため、肥満症治療薬としても使用されています。また、肥満や糖尿病だけでなく、心血管疾患慢性腎臓病アルツハイマー病、さらに、うつ病依存行動にも有効であるとする研究も報告され、その一部に対する臨床試験が開始されています。 

1.日本におけるGLP-1受容体作動薬 

複数のGLP-1受容体作動薬が2型糖尿病薬として承認されています。 

注射剤: リラグルチド(ビクトーザ)、セマグルチド(オゼンピック、ウゴービ)、デュラグルチド(トルリシティ)、リキシセナチド(リキスミア)、エキセナチド(バイエッタ)、アルビグルチド(タンゼウム) 

経口剤セマグルチド(リベルサス) 

GLP-1受容体作動薬注射剤は従来は毎日投与するタイプのものでしたが、一般名セマグルチドは、週に1回投与となり、他に経口剤リベルサスがあります。 

肥満症治療薬としての承認追加 日本では2023年3月にセマグルチド(ウゴービ)が肥満症治療薬として承認され、2024年2月22日より保険適用となりました。現在、国内で肥満症治療薬として認可されているのは本剤のみです。 

一般名セマグルチドは、2型糖尿病治療薬としては「オゼンピック」肥満症治療薬としては「ウゴービ」という製品名で販売されています。したがって、ウゴービとオゼンピックは、どちらも同じ有効成分「セマグルチド」を含む注射薬ですが、適応症が異なります。 

  • オゼンピック: 2型糖尿病の治療薬として承認 
  • ウゴービ: 肥満症の治療薬として承認 

どちらも週1回皮下注射する薬剤ですが、ウゴービは、肥満症治療のためにオゼンピックよりも高用量を投与します。 

以下は、おもに「肥満症」治療薬としてのウゴービについて記載します。 

2.効能・効果 保険適用の条件 

肥満症(タダの肥満とは違います) 

ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。 

・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する 

・BMIが35kg/m2以上 

肥満に関連する健康障害とは、肥満症診療ガイドライン2016の肥満症の診断基準」の11疾患 

  • (1) 耐糖能障害、(2)脂質異常症、(3)高血圧、(4)高尿酸血症・痛風、(5)冠動脈疾患、(6)脳梗塞、(7)非アルコール性脂肪性肝疾患、(8)月経異常・不妊、(9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、(10)運動器疾患、(11)肥満関連腎臓病 

成人には、ウゴービは、0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射する。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜減量する。 

ちなみに、オゼンピック(2型糖尿病治療薬)の用法・用量は、以下のとおりで、ウゴービとは異なる。 

成人には、週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができる。 

3.副作用 

  • 低血糖症状:脱力感、倦怠感、高度の空腹感、冷汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、嘔気、視覚異常等 

以下の状態にある場合は、低血糖症状が起きる可能性がある。 

脳下垂体機能不全又は副腎機能不全、栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態 

激しい筋肉運動、過度のアルコール摂取者 

  • 嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛等 
  • 急性膵炎、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸 
  • 消化器系: 吐き気、嘔吐、下痢、便秘 
  • その他: 頭痛、めまい、低血糖、膵炎、甲状腺がん 

栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足又は衰弱状態、激しい筋肉運動、過度のアルコール摂取者が挙げられています。美容目的のダイエットに夢中になりすぎている、スポーツ等で体重制限のための食事を過度に制限している方にとっては、非常に危険な薬を加えることになるので、おすすめできません。低血糖は時に致命的となります。必ず、自分のライフスタイルや食生活、ダイエットの様子を主治医に話しましょう。 

4.肥満症治療薬としてのガイドライン 

ウゴービは「最適使用推進ガイドライン(医薬品)」に該当する薬品で、ウゴービのガイドラインは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、日本肥満学会、日本肥満症治療学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本内科学会のもと作成されました。 

ウゴービは、あくまでも肥満症治療薬であり、厚生労働省は、ダイエット目的での使用は認めていませんので、医療機関によっては、ウゴービの使用に制限があります(以下に詳述)。適切な食事療法・運動療法に関わる治療計画を作成し、6カ月以上実施しても十分な効果が得られない患者であり、6カ月の間に2カ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けるという内容です。患者側からすると、ウゴービの治療を希望しても簡単に開始してもらえない制限がかかっているように見えますが、実は医療機関にとっても厳しい内容です。 

施設要件として、内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科又は糖尿病内科を標榜している保険医療機関であること。常勤の管理栄養士による適切な栄養指導を行うことができる施設であること。 

医師要件として、 医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に、高血圧、脂質異常症又は 2 型糖尿病並びに肥満症の診療に 5 年以上の臨床経験を有していること。高血圧、脂質異常症又は 2 型糖尿病を有する肥満症の診療に関連する日本循環器学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会のいずれかの学会の専門医を有していること。 なお、日本肥満学会の専門医を有していることが望ましい、とあります。 

つまり、「直美(当サイトのブログ読者はもう、ご存じですよね?」の医師は国内で保険承認されているウゴービの使用ができないことがわかります。つまり、医療機関への規制を厳しくすることによって、不慣れな医師によるGLP-1受容体作動薬の危険な使用を避け、患者を守っていることになります。 

  • 肥満者を対象におこなった臨床試験結果を基に承認がされているため、健常者での効果は低い可能性が高いです。 
  • GLP-1受容体作動薬は、膵炎や甲状腺がんのリスク増加との関連が指摘されています。 
  • 妊娠中または授乳中の女性への投与は推奨されておらず、2ヵ月以内に妊娠を予定する女性も対象となりません。 

5.米国でのGLP-1受容体作動薬 肥満症や心血管疾患の治療薬としても承認 

2型糖尿病: 上記の薬剤に加え、チルゼパチド(Mounjaro) 

肥満症: セマグルチド(Wegovy)、リラグルチド(Saxenda) 

心血管疾患: セマグルチド(Ozempic)、リラグルチド(Victoza) 

これらの薬剤が、国内の美容医療クリニック個人輸入されダイエット目的の自由診療で使用されています。あくまでも、医師と患者の同意に基づくものであり、国内での保険承認や様々な使用上の規制は及んでいません。また、もしも、副作用が生じた場合も、国内で承認された医薬品のような「医薬品副作用被害救済制度」の対象にはなりません。「医薬品副作用被害救済制度」とは、医薬品(病院・診療所での処方、薬局等での購入)を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や年金などの給付を受けられる公的制度です。 

米国内で上記薬剤が使用される場合は、承認済み薬剤ですが、日本で使用される場合は「野放し」であり、その医療機関だけの判断です。規制が及ばないとともに、公的な保障や救済もされないことをご承知ください。 

オンライン診療で、最適使用推進ガイドライン(医薬品)に記載されている医療機関や医師の要件を満たさずに、ホームページや広告安易に安全を謳っているクリニックは避けるべきでしょう。自由診療セーフティネット無ですから。また、カウンセリングの際に医師とほとんど話す時間がなくカウンセラーだけと話すようなクリニックもアウトです。 

6.副作用としての「うつ」の可能性 

1) 食欲低下による二次的なうつ 

  • GLP-1受容体作動薬の主な作用の一つに食欲抑制がある。 
  • 食事は楽しみや喜びと結びついており、食欲低下によってこれらの楽しみが奪われ、気分の落ち込みに繋がる。 

2)セロトニンへの影響 

  • セロトニンの分泌や働きに影響を与える。 
  • セロトニンは気分、食欲、睡眠などに関わる神経伝達物質であり、不足するとうつ症状が起こる。 

3) 直接的な脳への作用 

  • 気分や情動に関わる脳領域に影響を与える可能性がある。 

4)その他 

  • 消化器系の副作用(吐き気、嘔吐、下痢など)がQOLを低下させ、気分の落ち込みに繋がる。 
  • 体重減少に伴う身体の変化や、周囲からの反応が、精神的なストレスとなり、うつ症状を引き起こす。 
  • うつ症状は、薬剤の作用だけでなく、患者の性格や生活環境、基礎疾患など、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。 

確かに、食事が楽しみだった人からすれば、食欲の低下や食べられないことは、日々の生活にマイナスの影響を与える可能性はありますね。GLP-1受容体作動薬中止後のリバウンドとは、食欲が自由に解放され、楽しみが再開して食べ過ぎるのでしょうか?それを防ぐためにも、健康的な生活習慣を身に着けることを主とし、薬は副とすべきなのでしょう。 

7.内服薬と注射薬  

GLP-1受容体作動薬には、内服薬と注射薬がありますが、どちらに人気がありますか?皮下注射は自己注射も可能ですか? 

内服薬(経口薬) 

メリット 

  • 服用が簡便で、痛みがない。 
  • 注射の必要がなく、通院の手間や費用が軽減できる。 

デメリット 

  • 効果の発現が注射薬に比べて遅い。 
  • 現在、日本ではセマグルチド(リベルサス)のみが承認されている。 

注射薬 

メリット 

  • 効果の発現が内服薬に比べて速い。 
  • 様々な種類の薬剤が使用できる。 

デメリット 

  • 注射による痛みを伴う。 
  • 自己注射が必要な場合、技術の習得や針の廃棄などの手間がかかる。 

人気の傾向 

  • 世界的には、注射薬の方が人気が高いです。 効果の発現が速く、血糖コントロールが良好であること、体重減少効果が大きいことなどが理由です。 
  • 日本では、内服薬のセマグルチド(リベルサス)が登場したことで、内服薬の人気が高まっています。 特に、注射に対する抵抗感がある方や、通院が難しい方などに選ばれています。 

皮下注射の自己注射 

GLP-1受容体作動薬の皮下注射は、基本的に自己注射が可能です。 

  • 製薬会社が提供する自己注射の指導を受け、使用方法を正しく理解する必要があります。 
  • ペン型注射器など、患者さんが使いやすいように工夫されたデバイスが用意されています。 
  • 医療従事者から定期的な指導やサポートを受けることが重要です。 

どちらを選ぶか 

内服薬か注射かは、患者さんのライフスタイルや希望、薬剤の特徴などを考慮して、医師と相談して決めてください。 

8.GLP-1受容体作動薬との上手な付き合い方 

 従来の肥満対策と比べてリバウンドしにくいと言われるようですが、決してリバウンドしないわけではありません。 

リバウンドが少ないと言われる理由としては、GLP-1受容体作動薬が食欲を抑制し、基礎代謝をある程度上げることで、体重が減りやすい状態を作るからです。しかし、薬の効果だけに頼って生活習慣を改善しないと、投与を中止した後にリバウンドが起こりやすくなります。決して、根本的に体質改善しているわけではなく、服用中だけの変化なのです。リバウンドを防ぐためには、以下の点に注意することが重要です。 

GLP-1受容体作動薬はあくまで補助的な役割と認識する 薬に頼り切るのではなく、食事療法や運動療法を継続して行い、健康的な生活習慣を身につけることが大切です。 

食事療法

ドカ食いなどを避け、腹八分目を心がける。 

野菜、きのこ、海藻など、低カロリーで食物繊維豊富な食品を積極的に摂る。 

たんぱく質をしっかり摂取する。 

糖質や脂質の摂りすぎに注意する。 

運動療法

有酸素運動と筋トレを組み合わせる。 

無理のない範囲で、毎日、あるいは週に何回か継続して運動する。 

薬の投与を急に中止しない

医師の指示に従い、徐々に減量していく。 

自己判断で急に中止すると、リバウンドのリスクが高まります。 

定期的な診察

体重の変化や体調などを医師に報告し、栄養士からの適切なアドバイスを受ける。 

メンタル面

ストレスを溜め込まない。 

十分な睡眠をとる。 

GLP-1受容体作動薬は、肥満治療において有効な薬ですが、魔法の薬ではありません。リバウンドを防ぎ、健康的な体重を維持するためには、薬物療法と並行して生活習慣の改善に取り組むことが重要です。 

当オフィスでは、GLP-1受容体作動薬のような薬に頼るのではなく食事療法や運動療法を継続して行い、適切な生活習慣と体重管理を身につけることによってあなたが素敵なライフスタイルを確立することに貢献できます。ぜひ、無料相談やお問合せからご連絡ください。 

*ウゴービのガイドラインはこちらから https://www.pmda.go.jp/files/000265450.pdf 

*厚生労働省の注意喚起 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001201028.pdf 

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員
岩手県奥州市地域医療モデル・メディカルアドバイザー

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