報酬系とは脳内の神経回路の1つ ドーパミン

 報酬系とは、脳内にある神経回路のひとつの名称です。報酬と聞くと、仕事や役割に対する対価を思い浮かべる人が多いかもしれません。報酬と命名された理由やドーパミンとの関連性を解説します。そもそも「報酬」とは、行動を誘発する要因となるものです。空腹の人にとって、おいしそうなごちそうは報酬ですね。報酬系は、腹側被蓋野線条体側坐核からを経て前頭前皮質に至る回路です。報酬系を構成する細胞(ニューロン)は、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質を含んでおり、ドーパミンが側坐核に放出されると報酬系が活性化します。前のブログにも書きましたが、ドーパミンは「幸せホルモン」のひとつで、意欲や達成感に関わる脳内物質ですが、ほかには、脳の興奮を抑えリラックスさせるセロトニン、愛情や社交性に関わるオキシトシンなどがあります。

報酬系ホルモン「ドーパミン」の特徴

ドーパミンの別名は、「報酬系ホルモン」「やる気ホルモン」「幸せホルモン」です。ある行為によってドーパミンが放出されると、人は報酬を得られたかのような幸福感や達成感を覚えます。脳はその感覚を学習し、再び報酬を得るために、その行為を繰り返し行うようになるのです。

 報酬系のサイクルは、人間が生きるために必要不可欠なものです。しかし中には、必ずしも社会的に良い行動とは限らず、アルコールやたばこ、ギャンブル快楽を感じ、依存症になってしまう理由もここにあります。つまり、常習性のある行為は、報酬系に関与する「ドーパミン」の分泌を促すことが原因です。

1.予期せぬ幸運に恵まれたとき

 宝くじで高額当選したり、馬券が大当たりしたりすると、「まさか当たるとは思っていなかった」と興奮状態になりますが、このとき、ドーパミンが大量に放出されています。意外な上司から高評価をもらった時も。

2.報酬や幸運期待しているとき

 ドーパミンは、報酬や快楽が得られた時にだけ放出されるわけではありません。それらが起こる可能性があるとき、または、期待しているときにも放出されます。たとえば、誕生日にプレゼントをもらえるかもしれないときや、実現したい夢や目標を描いているときにも放出されます。報酬系を意識的に活性化させることが可能で、将来のワクワクするような夢や目標を掲げ、自分で期待することが報酬系ドーパミン活性化につながります。

3.よいことが起こるとわかっているとき

 旅行を控えているとき、昇進や合格が決まっているとき、欲しいものが届くのを待っているとき、好きな人とのデートの前、など。

普段から、うれしい予定を多く入れられれば、ドーパミンの放出を増やせるかもしれません。新しいことに挑戦したり、好きなことに熱中したりしているときも報酬系は活性化しています。

目次

報酬系を刺激して「やる気スイッチ」を押す

 やる気が起きるのは、ドーパミンの分泌によって脳内の報酬系が活性化されるからです。前のブログにも書きましたが、この報酬系メカニズムを利用すれば子どもの学習意欲を引き出せます。

1.適度にご褒美を与える ご褒美をもらえるかもしれない期待や、ご褒美をもらえたときの喜びにより、脳内の報酬系が活性化されます。褒められるはもちろん、喜ばれる(感謝されてお礼を言われる)こともご褒美ですね。

2.達成感を得て成功体験を積む 目標を設定する際の注意です。高すぎる目標はやる気を失わせ、低すぎる目標は達成感がありません。可能なレベルで達成可能な目標の成功体験をくりかえさせ、やる気を引き出すとともに達成時には肯定的な言葉で褒めてあげることです。

3.報酬系の長所と短所 ドーパミンが放出されて報酬系が活性化することが習慣化された人は多少のハードルや困難があっても乗り越えていけるようになります。 一方で、報酬系は依存症と結び付けられます。前のブログで紹介した「セフォラ・キッズ」が美容関連で良い体験、達成感を得ると、基礎的なスキンケアや化粧では物足りなくなります。自分でできるいわゆるプチ整形から、美容外科の注入(フィラー)系、さらには、高額な様々な美容外科手術ハマって沼るのもこの報酬系活性化の結果でしょう。高額な手術費用を得るためには高額な収入(まさしく、報酬)で得られる仕事(副業)に手を出さざるを得なくなり悪循環に陥る可能性があります。報酬系を刺激する際は、外発的動機付け(人からのご褒美や褒められること)と内発的動機付け(達成感や幸福感、自分へのご褒美)をバランスよく活用することが大切です。報酬系が悪い方向で発揮された結果が、ホストへの貢物であり、闇バイトの報酬です。

 一方、子供のころから「歌がうまい」と褒められた子は、さらに練習をして表彰されると達成感とともにもっと努力をするやる気が出ます。その結果、立派な歌手になったりします。つまり、習い事でもお稽古事でも、無理にさせても全く意味がないことはよくわかりますね。学校の成績が悪いと叱られてばかりいた子供は、勉強することや学校へ行くことでご褒美を得られた経験がありません。一方、悪い遊びや社会的にヤバいことで「スゴイ奴」などと褒められてしまうとこれが報酬系の活性になります。褒めることがあまりないときは、黙ってでも「大好き、良い子」と抱っこ(ハグ)してあげましょう。

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員

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