皆さんは日頃の医学・医療や健康に関してのあふれるほどの情報から何を基準にして、信頼度を計っていますか?
今日は簡単な見分け方のいくつかをご紹介します。
1.医療機関のホームページ 医師の略歴や資格が記載されていることは重要ポイントです。 必ずしも学歴(入学時の偏差値)が高いことは良い医師や優秀な医師を判断する基準にはなりません。所属学会とは臨床・研究に限らず興味をもって会費を払って、研究や教育に関する講演を行ったり聞いたりする同業・同好会に属している(多くの場合、会費を払えば会員になれます、時に現会員や役員の推薦が必要)ことで、専門医・認定医とはその学会が資格制度を設けて、実績や試験などによって得意・専門分野の基準をある程度満たした医師に与えたものを指します(簡単なものから難しいものまで様々。実技試験が必要なものも)。学位(医学博士)とは過去に研究・大学院に在籍したことで得た研究分野における学歴を持つこと(一般には大学卒は学士、大学院卒は修士または博士。医学部は6年と在学期間が長いので、卒業すると学士であるが修士と同様で、その後、4年以上の大学院または7年の研究歴で医学博士を取得可能)を示し、臨床医としてのレベルを指す基準ではありません(医師でない医学博士もいます)。学会に所属し、専門医や学位を持っていたほうがたくさん勉強していることにはなるので、そういう意味の基準にはなります。知識や経験を持たず、遊んでばかりいる医師はこれらを持っていないでしょう。
2.SNS・メデイア・インターネット 医療用語の使い方、とくに「がん」が参考になります。例えば、「がん」は怖い病気ですが、この単語をどのように表記しているかが、意外なことに判断の目安になります。所属する学会や組織・団体、社会によって若干の違いはありますが以下が主なコンセンサスです。
「がん」とは悪性腫瘍全般を指す言葉です。悪性腫瘍とは治療をせずに放置しておけば、死亡するなどの重症に至る腫瘍(出来物)です、転移や再発もあります。良性腫瘍は腫瘍ですが、大きさくなることはあっても、原則、これで命を落とすことはありません。
では、「癌」はどうでしょうか?悪性腫瘍のうちで皮膚や臓器の表面など(上皮と呼ぶ)に発生するものを癌と呼びます。胃や腸は体の中にありますが、胃癌や大腸癌はその内側の上皮から発生します。一方、上皮ではなく骨や筋肉、臓器の中(間質と呼ぶ)から発生するのが肉腫です。子宮頸癌や体癌は上皮に発生する悪性腫瘍で、子宮の筋肉にできる良性腫瘍は子宮筋腫ですが、悪性腫瘍は子宮肉腫といいます。したがって、「癌」は病気の医学的診断名を指すと考えてよいです。
さて、カタカナの「ガン」はどうでしょうか?これには実は上記のようなコンセンサスはありません。ただし、一般的にはカタカナで書くことで、読者や視聴者に怖いというイメージを抱かせたいとき(情報操作)に使われるようです。意識低い系週刊誌やSNS、健康食品・サプリ・怪しい医療器具などのCM、いかがでしょうか?意外にあたっていますよ。
ひらがなの「がん」は悪性腫瘍全般を指すことはすでに書きましたが、医学的な「癌」と「肉腫」のどちらにも使われますし、白血病のような血液の悪性腫瘍にも使われます。区別がつかない、診断がついていないときは「がん」と記したほうが正しい表記になります。「ガン」のように病気の怖さを強調するのではなく、ひらがなの使用によって印象を和らげている(例えば、がん検診、がん保険)こともあるようです。ちなみに、英語で、癌はcarcinoma、肉腫はsarcomaと書き、がんはcancerと書くとほぼ同じニュアンスが伝わります。
「ガン」の表記を見た時にはその記事や広告、情報を疑ってかかるのは、経験的にはほぼ間違いないものです。
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