GLP-1の脳や消化器、心血管系への作用メカニズム 少し詳しくお伝えします。

GLP-1の生物学的機能は何?いわゆる薬剤(受容体作動薬)ではなくGLP-1自体の機能を説明します。

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1、Glucagon-like peptide 1)は、主に小腸のL細胞と呼ばれる内分泌細胞から分泌されます。食事を摂取すると、GLP-1の分泌が促進されます。以下の作用があります。

1. 血糖値調節と膵臓、胃、腸、肝臓への作用

  • インスリン分泌促進作用: 血糖値の上昇を感知して膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる
  • グルカゴン分泌抑制: GLP-1はグルカゴン(血糖値を上げるホルモン)の分泌を抑制することで血糖値の上昇を抑える
  • 胃内容排出抑制: 食後の胃内容物が腸(食物の栄養は腸で吸収される)へ排出される速度を遅らせることで、血糖値の急上昇を防ぐ
  • 糖新生抑制: 肝臓での糖新生(糖以外の物質からグルコースを生成すること)を抑制することで、血糖値の上昇を抑える

2. 食欲抑制

  • 満腹感亢進: 脳の満腹中枢に作用し、満腹感を感じやすくすることで食欲を抑制する。

3. 心臓

  • 心筋収縮力を高め、心拍数を調節する。
  • 血管拡張作用抗炎症作用などにより、心血管系を保護する。

4. 腎臓

  • 腎臓の血流量を増加させ、ナトリウム排泄を促進することで、血圧を低下させる。

5. 脂肪組織

  • 脂肪細胞に作用し、脂肪分解を促進したり、脂肪合成を抑制したりすることで、体重減少効果をもたらす。

つまり、血糖値を下げて糖尿病を防ぐ、胃腸の動きを抑えて「お腹がいっぱい」にさせ、脳(食欲中枢)でも満腹感を感じる。これによって、たくさん食べられなくなり、食べても太らなくなるという「痩せ」への体調変化が起きるというわけです。

次回、以降もさらにGLP-1の説明をしていきます。

ご質問のある方は、ぜひ、無料相談で直接にお問合せください。

*図は以下の論文から引用 Biology of Incretins: GLP-1 and GIP – Gastroenterology https://els-jbs-prod-cdn.jbs.elsevierhealth.com/article/S0016-5085(07)00580-X/fulltext#fig3

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員

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