フィラー(充填剤)注入のリスクは意外に多い ご注意を

*下段に、難しい用語の説明を挙げました(*)。詳しく、説明を受けたい方は「無料相談」でお尋ねください。 

 2019年に報告された国内3,093の医療施設を対象に美容医療有害事象(合併症、後遺症)の実態調査*によれば、重度有害事象*は高齢者に多く,原因となった美容医療施術のうち,非外科的(注入などのメスを使わない)手技での有害事象では,非吸収性充填剤*とヒアルロン酸*製剤注入によるものが 8 割を占めたとのことです.重度合併症では感染症や異物肉芽腫,皮膚壊死などが報告され,後遺症では非吸収性異物注入後の異物肉芽腫が多く,重度後遺症の 1/3 は施術から 5 年以上経過した後に発生していたそうです.つまり、重い後遺症は非吸収性はもとより、吸収性(溶けて無くなるはずの)製剤の注入であっても後遺症は発生し、何年も経ってからだということです。注入は決して、入れすぎないように!繰り返さないように!がポイントです。また、施術直後の出来上がりが必ずしも、継続するわけではないことも覚えておいたほうがよいです。

*令和元年度厚生労働科学特別研究事業「美容医療における合併症の実態調査と診療指針の作成」から

*重度有害事象とは、医療や治療の過程で発生する予期しない、または望ましくない出来事のことを指します(因果関係がないものも含みます)。これには、患者の健康や安全に重大な影響を及ぼす可能性がある事象が含まれます。具体的には、以下のようなものが挙げられます:

・死亡:治療や手術の結果として患者が死亡する場合。

・生命を脅かす状態:患者が生命の危機に瀕する状態になる場合。

・入院の必要性:予期しない入院が必要となる場合。

・障害や後遺症:治療の結果として恒久的な障害や後遺症が残る場合。

非吸収性充填剤(フィラー):一般的にはシリコンゲル,Aquamid®,ArteFill® が代表的な製剤で、最近はポリアクリルアミドハイドロジェル(PAAG)などの高分子化合物を配合して永続的な効果を期待したものが多く使用されている。非吸収性製剤は長期間異物として体内に残存するために肉芽腫形成や晩期感染など重篤な合併症を生じやすい.また,ヒアルロン酸に対するヒアルロニダーゼのような分解製剤も存在しない.注入異物が組織内に入り込むため,合併症を起こした際の製剤除去治療は困難となる.

ヒアルロン酸(以前の記事も参考にしてください):代表的な吸収性充填剤(フィラー)で、理論的にはヒアルロニダーゼ製剤により分解することができる。しかし、ヒアルロン酸などの吸収性フィラーであっても被膜形成や線維化成分の隙間に取り込まれることにより、長期間、残存し非吸収性フィラーと同様な結果になることがある。

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員

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