腟ハイフについて エステと美容医療における評価 日本と海外

 今回は、HIFU(ハイフ)の中でも婦人科形成といわれる領域の腟ハイフについて記します。情報を日本(日本語)と韓国(韓国語)と欧米(英語)で検索しました。

エステにおける腟ハイフ

 日本では、美容エステサロンで腟ハイフを提供している施設は増加傾向にありました。効果として、腟の引き締め尿もれの改善、性機能の向上などが謳われています。国民生活センターには、腟ハイフによる施術後の痛みや出血火傷などのトラブルに関する相談が寄せられました。その結果、現在、国内では前のブログのHIFUの項で詳しく書きましたが、エステサロンにおけるHIFUの使用は禁じられています。つまり、これはアウトです。こんな怖いことは避けましょう。

 韓国での腟ハイフは「腟縮小術」や「イェゾニハイフ」などと呼ばれ、エステサロンでも広く提供されていたようです。しかし、腟ハイフに関する明確なガイドラインや規制が不足していて、施術者の技量や機器の品質によっては、火傷や神経損傷などのリスクも懸念されています。

 欧米では腟ハイフは「vaginal rejuvenation 腟若返り」や「vaginal tightening 腟引き締め」などの施術として提供されていますが、エステにおける腟ハイフは規制が曖昧な状態です。

美容医療における腟ハイフ

 日本の美容医療分野では、腟ハイフが医療機関で提供されるケースもあります。しかし、日本産科婦人科学会は、腟ハイフの安全性と有効性については何の見解も示していません。十分なエビデンスが確立されていないので、現時点では腟ハイフを推奨していない状況です。

 厚生労働省は、美容医療におけるハイフ機器の使用について、医療機器として承認されたものを使用するよう指導していますが、実際、国内で承認された機器はありません。また、医療従事者以外による医療行為は、医師法違反になると警告し、指導や取締りを行っています。

 韓国の美容医療分野では、腟ハイフは婦人科系の疾患治療の一つとして医療機関で提供されるケースもあるようです。

 欧米の美容医療分野では、腟ハイフは比較的新しい施術であり、まだ十分なエビデンスが確立されていないため、効果や安全性については不明で、更なる研究が必要とされています。

学会・関連団体の見解

日本産科婦人科学会: 腟ハイフについて公式に発表した見解やガイドラインを示す資料は見当たりません。腟のゆるみ治療として、骨盤底筋体操手術療法などが紹介されています。

대한산부인과학회 (Korean Society of Obstetrics and Gynecology 韓国産婦人科学会): 腟ハイフの安全性と有効性について、まだ十分なエビデンスがないという立場をとっています。

대한성형외과학회 (Korean Society of Plastic and Reconstructive Surgeons 韓国美容外科学会): 腟ハイフを含む婦人科形成術は、専門的な知識と技術を必要とする医療行為であると強調し、資格を持った医師による施術を受けることが重要であると勧告しています。

The American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG 米国産婦人科学会): 腟若返りに関する声明の中で、腟ハイフを含む非侵襲的な施術の安全性と有効性に関するエビデンスは限られていると述べています。更なる研究が必要であり、リスクとベネフィットをよく理解することが重要であると強調しています。

The International Society of Aesthetic Plastic Surgery (ISAPS 国際美容外科学会): 引き締め効果があるとしていますが、長期的な安全性と有効性については更なる研究が必要であると述べています。

結論 腟ハイフは、美容医療の分野でも注目されている施術ですが、その評価は国内外で不十分です。効果を謳う一方で、リスクも存在するため注意が必要です。とくに、腟ハイフによって性感・性機能が向上するなどの表現をしているクリニック・エステサロンは私からみるとアウトです。

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員

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