消費者庁の消費者安全調査委員会が、HIFUの健康被害を調査して、消費者安全法第 23 条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書を厚生労働大臣、経済産業大臣、消費者庁長官あてに、その結果と意見書を提出しました。それを受けて、前のブログの厚生労働省通知が出されたとともに、経済産業省からも、エステティック業界団体と協力し、関係事業者に対しHIFU施術の危険性についての注意喚起がされました。各業界団体もプレスリリースを発表しました。以下の経済産業省のサイトをご参照ください。業界団体サイトもそこに引用されています。
特定非営利活動法人日本エステティック機構
一般社団法人日本エステティック振興協議会
公益財団法人日本エステティック研究財団
一般社団法人日本エステティック協会
一般社団法人日本エステティック業協会
一般社団法人日本エステティック工業会
一般社団法人日本全身美容協会
全日本全身美容業協同組合
一般社団法人エステティックグランプリ
一般社団法人日本エステティック経営者会
さて、消費者庁安全調査委員会の報告書(概要版)から重要なポイント解説します。少し長くなりますが、HIFUについて正しくお知りになりたい方は、ぜひ、お読みください。なお、数字は調査時のものです。
独⽴⾏政法⼈国⺠⽣活センターは、2017年にHIFU 施術をエステサロン等で受けないように、消費者に対して注意喚起を⾏い、エステティック業界主要団体に加盟するエステサロンでは HIFU 施術を⾏わないことになっていました。しかし、エステサロン全体の加盟率は1割以下と推測され、実際には未加盟エステサロン等で、その後も施術が⾏われ被害が報告されたため、エステサロン等による HIFU施術の実態や事故情報について調査が行われました。
HIFU は医療機関である美容クリニック、エステティシャンが施術するエステサロンのほか、店舗に置かれた HIFU 機器を利⽤者⾃らが扱うセルフエステなどで⾏われている。また、⾃宅等で利⽤者⾃らが施術することもある。HIFU 施術による事故情報データバンクで、2015 年に初めて事故が登録され、増加傾向にある。エステサロンの事故増加が顕著。
エステサロンでの事故が多いが、中でも傷病の程度が1か⽉以上(症状が治らない)の事故の割合は「神経・感覚の障害」が 15 件中8件(53.3%)と最も⾼い。
発⽣した部位では、顔が 70%を占めるが、下半身、上半身、他でも起きている。
HIFU 施術の利⽤者 1,000 名及び 施術者 269 名に対して、インターネット調査した結果は以下の通り。
①施術者に対する機器や施術の教育が⼗分ではない。
②施術の際の利⽤者への説明が⼗分ではない。
③利⽤者が HIFU 施術のリスクを認識していない。
④利⽤者の約1割が、施術を受けた後に痛みや違和感があった。
国内の HIFU 機器はほとんどが輸⼊品であり、2023年現在、国内では未承認である。美容クリニックでは、輸⼊代⾏業者通して未承認の医療機器として、医師が個⼈輸⼊している。⼀⽅で、医師のいないエステサロン等では、このような⽅法で輸⼊を⾏うことはできす、それらの機器は、医療機器ではない製品(雑品)として、輸⼊されていると推定される。
事故の原因
HIFU 施術は、難しい施術である。施術を⾏うには、神経や⾎管の位置などの解剖学知識が必要である。また、美容クリニックで使われている機器と変わらない照射出⼒の⾼い機器や、安全上信頼性の低い機器がエステサロン等で使われている実態が確認され、これらが直接の原因と考えられた。以下に要点を示します。
(1)HIFU 施術及び機器に関する法規制が及んでいない 美容で⽤いる引締め等の効果を有する HIFU 施術が、医師法における医⾏為に当たるかについては明確な判断が⽰されておらず、(当時は)個別判断にとどまっていた。さらに、HIFU 機器が薬機法の医療機器に該当するかについても同様であり、医療機器ではない製品(雑品)として、薬機法の輸⼊確認制度を潜脱して個⼈輸⼊されて国内流通している実態が推定された。
(2)施術の技術的困難さが施術者に知られていない ⽣体への熱影響を抑えながら有効性が期待できる施術を⾏うには、機器の出⼒や照射⽅法を適切に調整するという⾼度な技術が必要であり、適切な施術が⾏われない場合には、顔の神経障害という深刻な危害を及ぼすリスクが、HIFU 施術者において⼗分に認識されていなかった。
(3)照射出⼒の⾼い機器が使⽤されている エステサロン等で使⽤されている HIFU 機器の照射実験を⾏った結果、美容クリニックで使⽤されている機器と照射能⼒の違いはみられなかった。むしろ、照射出⼒の⾼い機器がエステサロン等で使われている実態が認められた。
(4)信頼性の低い機器が使⽤されている エステサロン等で使⽤されている HIFU 機器には、超⾳波の照射状況だけでなく機器の故障も施術者が把握できていないものがあり、その結果、推奨される出⼒よりも⾼い出⼒で照射してしまうリスクを抱えていることが認められた。
(5)施術者の施術に関する知識の⽋如 美容クリニックでは医師資格により、解剖学的知識を有する者が施術を⾏うが、エステサロン等では、エステティシャンの資格規制がないため、⼈体の解剖学的知識を有しない者が施術を⾏っている。機器や施術の教育が⼗分ではないこと、リスクの知識が薄いことが認められた。
(6)注意喚起が⾏き渡らない業界の実態 団体未加盟の店舗が多く、周知や注意喚起を業界全体に⾏き渡らせることができない実態が推定される。
(7)利⽤者がリスクを知らない 利⽤者への調査からは、利⽤者の約6割が HIFU 施術のリスクを認識していない実態が認められた。
再発防⽌策 以上の点を考慮して、以下の事項が厚生労働省、経済産業省、消費者庁に意見として提出され、その後の適切な規制につながった。
(1)医⾏為としての施術者の限定、(2)輸⼊機器流通の監視強化、(3)施術者への情報共有 、(4)HIFU 施術のリスクに関する注意喚起 、(5)利⽤者への注意喚起
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/hifu.html
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