スレッドリフト(糸リフト)は有効?安全?効果はどのくらい続く?

  1. スレッドリフトとは?

 スレッドリフトは、美容医療施術として人気がありますが、その安全性と有効性については様々な情報があり、混乱されている方もいらっしゃるでしょう。かつて行われていた単純に糸で組織を引き上げて縫合する方法では、1点に牽引張力の負担がかかるため、損傷が生じやすく、長期間にわたる効果は期待できなかった。その後、糸に棘(barb)を付けることで、組織を牽引する張力を多数の棘に分散させて組織の損傷を軽減し、結果的に引き上げ効果の延長を得るというスレッドリフトの方法が行われるようになった。棘の形状、糸の固定の有無、糸の素材、さらには糸の挿入方法などの違いにより、多くの種類の製品が販売され、使用されているが、国内ではスレッドリフト用に承認された糸はなく、すべてが未承認品である。現在のところ、スレッドリフトの手技について、どのような糸を用いて、どのような手技で挿入し、どのように糸を配置し、何本の糸を挿入するのがよいのかという、基本的な疑問に対するコンセンサスは得られていない。

2. 安全性

 合併症は軽微なものが多く、比較的安全である。吸収性糸と非吸収性糸では、非吸収性糸での合併症の報告が多い。以下のようなリスクが存在します。

  • 感染: 糸の挿入部から細菌が侵入し、感染を引き起こす可能性。
  • 腫れや内出血: 施術に伴う腫れや内出血。通常は数日で消失するが、ときに長引くことも。
  • 痛み: 施術中や施術後の痛み。
  • 糸の露出: 糸が皮膚から露出してしまう。
  • 皮膚の凹凸: 皮膚に凹凸が生じる。
  • 神経損傷。

 重篤な合併症としては、肉芽腫形成や感染を生じたために異物である糸の除去を必要とした例や、顔面神経麻痺、稀ではあるが耳下腺管の損傷や浅側頭動脈の仮性動脈瘤などの報告もある。

3. 有効性

 スレッドリフトの有効性については、多くの臨床研究が行われており、タルミ改善効果や肌のハリ感の改善効果が認められています。ただし、効果の持続期間は糸の種類や個人差によって異なり、一般的には数ヶ月から1年程度といわれています。ほとんどの研究は、スレッドリフトの有効性を主観的に評価したものであり、客観的に評価した研究では、その効果は短期的な結果しかもたらさず、その効果は術後の一時的な浮腫と炎症(術後の当然な反応)によるものであるとされている。以上より、現時点ではスレッドリフトの有効性は限定的なものであり、かつ持続性も短いと言わざるを得ない。

 スレッドリフトの効果は、糸による軟組織の引き上げという直接的なもの以外に、吸収性の糸が溶ける際に周囲に生じる線維化により組織が引き上げを維持するという間接的な効果も報告されているが、それを客観的に示すデータは存在しない。すなわち、スレッドリフトの長期的な効果については不明と言わざるを得ません。

5. 結論

 適切な施術であれば、比較的安全で有効なタルミ治療法と言えるでしょう。しかし、リスクも存在するため、医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解しておくことが重要です。美容医療診療指針では、スレッドリフトにより、一時的に顔のシワ・タルミの改善が期待できる。その効果が大きなものではなく、効果の持続期間が短期間なものであることを十分に説明の上、行うことを弱く推奨できるとしている。

 スレッドリフトは、手技の簡便さ、合併症の軽微さを重視し、スレッドリフトを希望する場合の選択肢となりますが、効果は大きなものではないこと、短期間しか持続しないこと、それに伴い、引き続いて治療を重ねた場合には高額なコストが発生する可能性があること、稀ではあるが合併症により抜去を必要とする場合があること、非吸収糸には吸収糸に比べて合併症の発生が多いことなどを十分に理解し、納得の上、治療を受けるべきでしょう。医師との十分な相談が重要です。

*写真は以下のサイトから。https://www.esthetichungary.hu/arcfiatalitas

*日本美容外科学会: 美容医療診療指針 https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00749/

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員

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