シワ・タルミに対するレーザーなどのエネルギー発生機器治療の基礎知識 

レーザーが一番良いの? そんなことはありません たくさんの種類と方法があります。

 今回は、シワとタルミの改善のために使用される主なレーザー等の機器として、フラクショナルレーザー療法(fractional laser skin resurfacing:FLSR)、高周波治療(radio frequency:RF)、高密度焦点式超音波治療法(high intensity focused ultrasound:HIFU)の説明をします。HIFUは前の記事の内容と一部重複します。

 フラクショナルレーザー療法の特徴は、2004年考案された極めて微細な照射径(0.08~0.3mm)のレーザー光(micro laser beam)を細かい間隔で照射して、皮膚を円柱状に蒸散(飛ばしてしまう)、もしくは熱凝固するという方法です。例えれば、やわらかいチーズに対してヘアブラシを突き立てて小さい円柱状の穴を等間隔に開ける感じ。この操作で皮膚の内部組織に修復・再生機序を誘導することにより、シワやタルミを改善させます。組織を全体に削ったり凝固したりするよりも、円柱状の穴(または凝固)の周りに正常組織が残ることによって、治療部位における照射後の治りも早く、色素沈着や瘢痕形成などを生じるリスクも低くなります。

 本療法には、皮膚内部の組織を円柱状に熱凝固・変性させるだけの Er:glass fiber レーザー(波長1540/1550/1565nm)や Nd:YAG レーザー(波長1440nm)などを使用した非蒸散型と、レーザーで皮膚組織を円柱状に蒸散して一時的に中空(筒状の空間形成)にしてしまう炭酸ガスレーザー(10600nm)、Er:YSGG レーザー(2790nm)、Er:YAG レーザー(2940nm)などを使用した蒸散型に分けられます。

 フラクショナルレーザー療法について、美容医療診療指針では、効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばないが、瘢痕形成は稀であり体内に異物を残さないため、非外科的な方法でシワ、タルミの改善を希望する患者の選択肢の 1 つとして行うことを弱く推奨できるとしています。しかし、色素沈着、熱傷、瘢痕形成などの副作用に注意が必要です。機器の承認状況は、炭酸ガス(CO₂)レーザーの本体については国内承認が取れているものが多いが、フラクショナル照射に必要なレーザー機器のアタッチメントについては現段階では1種類のみが医療機器として国内承認が取れている状況です。

 RFラジオ波とも呼ばれる、おおむね数 10kHz~30GHz 程度の波長領域をエネルギー源として、誘電加熱の原理に基づいて誘電率の高い分子を激しく運動させて皮膚内部を局所的に温め、組織の修復・再生機序を誘導するもので、シワとタルミの改善が期待できます。表面のハリ感や肌質を改善させる機序としては、皮膚コラーゲン線維の軽度の炎症・浮腫(膨化作用)による即時性(施術直後)反応と、熱破壊に伴う組織の再構築により数か月かけて生じる遅発性反応によるものとが考えられています。実際には、外見上明らかな改善が見られるのは顔面の下外側の変化が大きいようです。本療法には、単極方式(モノポーラ)と双極方式(バイポーラ)があり、前者は 2002年に眼周囲のシワの改善、2004年にはシワの改善を目的とした美容用のRF 治療器として、米国 FDA(食品医薬品局)から承認を得ています。また、近年では後者の亜型として極細の微小電極やマイクロニードルなどを使って、小さな照射径の高周波を細かく分散して照射するフラクショナルRF (フラクショナルの概念は上記のレーザーと同じ)も開発されています。

 ラジオ波の効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばないが、瘢痕形成は稀で、体内に異物を残さないため、選択肢の 1 つとして行うことを弱く推奨できるとされています。現段階では1種類のみが医療機器として国内承認が取れている状況です。

 副作用としては照射時~照射後には、一過性の非持続性の疼痛、軽度の発赤、腫脹、痂皮、紫斑などが出現することがある。熱傷、炎症後色素沈着、瘢痕や壊死などの合併症の頻度は低いが、予防のためには、高い粒子線量(フルエンス)で1 回照射するよりも、低いフルエンスで複数回のパスを行う方法がよいようです。美容医療診療指針では、比較的安全な治療法であるため患者の選択肢の1つとして推奨しています。

 HIFU は組織中の水中での伝播に優れるため、真皮網状層の中層~下層の特異的な深さに十分なエネルギーを与えることができます。高エネルギーの超音波を発生させ、これを高密度に集束させることにより、真皮組織や皮下組織を熱凝固させ、皮膚組織を収縮させます。これにより真皮コラーゲン線維やエラスチン線維の新生、表在性筋膜群の引き締めなどを行い、皮膚のタルミの改善(リフトアップ)やハリの改善(タイトニング)などを誘導することができます。

 美容医療診療指針では、HIFUの効果は外科手術や注入剤を用いた治療に及ばないが、瘢痕形成は稀で、体内に異物を残さないため、合併症の危険性が低く、タルミ治療の選択肢の 1 つとして行うことを弱く推奨できるとしています。ただし、機器はすべて国内未承認で、副作用として瘢痕形成、神経麻痺などが挙げられ、十分な注意が必要です。一部の学会で若年層へのHIFU施術の安全性を懸念する発表もありました。

 以上の3種類の治療を比較すると、いずれも、有効性はあるもののそれほど高いものではなく、副作用が比較的少なく軽微であることから、弱い推奨が行われています。ただし、長期成績(何時まで効果が続くのか?)の根拠には乏しい状況です。レーザーやRFは比較的歴史が長いので、若干、HIFUよりも安全性の点では優っているかもしれません。

治療を希望されている方は、医師と十分に相談し、納得してから行ってください。

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この記事を書いた人

代表紹介 今野良 
医師 (自治医科大学卒業)
医学博士 (東北大学)
Prof. Ryo Konno, MD, PhD
臨床医・研究者としてのキャリアと実績

所属・学会・研究員
自治医科大学総合医学第2講座(産婦人科)教授
日本産婦人科学会(専門医)、日本婦人科腫瘍学会(専門医)、日本産婦人科内視鏡学会(理事、技術認定医)、日本臨床細胞学会(専門医)、日本エンドメトリオーシス学会(理事)、日本婦人科がん検診学会(2012年学術集会長)、日本美容内科学会、日本癌学会、日本癌治療学会、日本産婦人科医会、日本医学旅行学会
Asia-Oceania Research Organization in Genital Infection and Neoplasia (AOGIN アジアオセアニア生殖器感染および腫瘍研究機構、日本代表理事、2017年東京大会会長)
Aesthetic &Anti-Aging Medicine World Congress(世界美容・アンチエイジング医学会)
Wold Endometriosis Society (世界子宮内膜症学会)
NPO子宮頸がんを考える市民の会(理事長)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班員
独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター(UNIBIOHN)客員研究員

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